宝石たちの日常や葛藤、激しい戦いを
思わず息をのむような美しさで描いた
市川春子による話題の漫画『宝石の国』!
テレビアニメ化やジュエリーコラボなど
さまざまな展開を見せてくれましたが、
最終13巻が発売され、物語完結となりました。
漫画『宝石の国』の見どころのひとつが……
最弱の主人公フォスフォフィライト(フォス)が
何度も姿かたちを変化させていくところ!
予想以上に衝撃的な展開が続いていくので
気になっている方もいらっしゃるのでは?
この記事では「七宝説」と「人間説」の考察メモや
フォスの最終形態に至るまでの変化の過程について
まとめて解説していきます◎
※最終13巻までのネタバレ情報を含みます
※当サイトに掲載している文章の無断転載はお断りします
『宝石の国』フォス最終形態に至るまでの変化のゆくえ
原作開始時点では、
明るくて自分に正直な性格の
フォスフォフィライト、通称フォス。
硬度も低く、割れやすいフォスは
『宝石の国』の最弱主人公ですが…
その都度他の鉱物で体を変えていくので
ここではその変化の過程をご紹介していきます♪
変化1:海の戦いで失った両足にアゲートと貝殻を接合
フォスフォフィライトの状態1
- 両足:アゲート(硬度7)・貝殻
フォスは「肉の者」と呼ばれる巨大カタツムリの
ウェントリコスス王に捕食されたことで、
アドミラビリス族の言葉が分かるように。
他の宝石たちには言葉が通じておらず、
会ったばかりのウェントリコスス王が
寂しそうに故郷や仲間の話をするので
ふたりは禁止されている海へ向かいます。
向かった先の海の中で月人に襲われ、
戦闘の結果、両足を失いますが
フォスに近い物質がなかったことから
アゲート(硬度7)とアクレアツスの巨大な貝殻部分を
失った両足の代わりとして繋ぐことになりました。
これで体を構成する鉱物の3分の1が
別の物質に成り代わっていきます。
変化2:流氷にさらわれた両腕に金と白金の合金を付ける
フォスフォフィライトの状態2
- 両足:アゲート(硬度7)・貝殻
- 両腕:金と白金の合金
- 髪型:ボブスタイルから短髪へ
- 靴:合金による高いヒール付き靴
今まで以上に速く走れるようになったフォスは、
アメジストのふたりに連れられた戦闘では
いざというときに怖くて動けなくなります。
そんな悔しさから、冬の流氷割りの仕事に挑戦することに!
ちょっとずつアンタークから教えてもらいながら
みんなの冬眠を守る流氷割りをしますが…
流氷の声に耳を傾けてしまい、両腕を流氷に砕かれ紛失!
非常に重くてやわらかい、使えない素材の
金と白金の合金を仮留めします。
うまく自分自身の腕を制御できないときに
明るくなった空に月人が襲来!
なんとか月人を追い払っても
無くしてしまった破片は見つからず
結局、薄荷色の自慢の髪で埋めることに。
フォスのオリジナルの体部分は
もう頭部と胴体部分しか残っていません。
フォスに大きな影響を与えたアンタークについて知りたい方はこちらから!↓

変化3:月人に奪われた頭部はラピス・ラズリの頭で代用
- 両足:アゲート(硬度7)・貝殻
- 両腕:金と白金の合金
- 靴:合金による高いヒール付き靴
- 頭部:ラピス・ラズリ(硬度5)
カンゴームとコンビを組むようになった
冬の仕事が始まる前の戦闘中、
フォスフォフィライトの頭部が月へと持ち去られます。
カンゴームは自分とゴーストが大切に保管していた
ラピス・ラズリの頭部をつなげることを提案。
頭部の接合に成功して目覚めても
フォスフォフィライトと呼べる確証はないということを覚悟しつつ
ラピス・ラズリの頭部を接合します。
結果として接合には成功。
しかし、102年間眠り続けることに。
変化4:仲間を庇ってラピスの髪を失って短髪フォスへ
もともとのオリジナル部分は、半分以下に!
新しいラピスの頭部はよく馴染み、
天才的な頭脳を利用していくフォス。
現在の体を形作る鉱物の構成はこれまでの5種類から、
ラピス・ラズリ特有の6種類がプラスされて合計11種類に!
- 胴体:フォスフォフィライト自身
- 両足:アゲート、貝殻
- 両腕:金、白金
- ラピス・ラズリ頭部:ラズライト、ソーダライト、アウイン、パイライトを中心とした鉱物6種類
きれいな青色の長いストレートヘアを持ち、
大人びた表情をするようになりましたが
カンゴームに切望され、髪型を変えることに。
モルガとゴーシェを月人から庇ったときに、
自慢のポニーテールを犠牲にしたので
以前のような短髪になってしまいます。
表情豊かだった過去のフォスはいなくなり
月人のことについて考えているためか、
無表情になることが多くなっていきます。
変化5:月の技術で作られた合成真珠を左目に埋め込まれる
フォスフォフィライトの状態4
- 両足:アゲート(硬度7)・貝殻
- 両腕:金と白金の合金
- 靴:合金による高いヒール付き靴
- 頭部:ラピス・ラズリ(硬度5)
- 左目:月の技術の合成真珠
ラピスの言葉や金剛先生への不信感、
その他もろもろから月に行くことを決意。
月では監視の目的も兼ねて
月の知恵の結晶でもある合成真珠を
突如、左目に埋め込まれてしまいました。
瞼は閉じられず、暗い場所で光り続けるはめに…!
服装と武器も月で作られたものを身につけています。
変化6:地上の宝石によって粉々に砕かれた後に復元される
フォスフォフィライトの状態5
- 両足:アゲート(硬度7)・貝殻
- 両腕:金と白金の合金
- 靴:合金による高いヒール付き靴
- 頭部:ラピス・ラズリ(硬度5)
- 左目:月の技術の合成真珠
- 棘や光背:漏れ出した合金
単身で地上に乗り込んだフォスは、
地上に残してきたかつての仲間によって
破片になるまで粉々に砕かれます。
220年の月日が経った後、金剛によって復元され、
戻った月でも合成宝石で補完されることに。
精神状態が不安定となったことから
頭部は鋭く大きくえぐれ、
首から棘や背中から光背の形をした合金が漏れ出します。
変化7:シンシャとの戦いで水銀を取り込む
フォスフォフィライトの状態6
- 両足:アゲート(硬度7)・貝殻
- 両腕:金と白金の合金
- 靴:合金による高いヒール付き靴
- 頭部:ラピス・ラズリ(硬度5)
- 左目:月の技術の合成真珠
- 皮膚(肌):シンシャの水銀
月人を消して戦争を終わらせるには、
金剛に祈らせることが必要。
フォスは目的のためにたくさんの月人たちを率いて、
地上の学校に残った宝石たちを粉々に砕いていきます。
かつての仲間たちが立ちふさがる中、
対峙したのは「とある約束」をしたシンシャ。
シンシャは自分の水銀を放ち、
フォスも合金を操って戦います。

砕けながらも最期まで戦い抜こうとするフォスとシンシャの姿は、思わず息を呑むほどの美しさ!
お互いがぐちゃぐちゃに混ざり合った
1つの水たまりになって決着を迎え、
最終的に勝ったのはフォス。
知らぬ間にフォスはシンシャの水銀を取り込んでいたようで、
突然、頭部から水銀があふれ出ることに!
シンシャの水銀によってフォスの化物じみた頭部は
より人間のような姿へ変化していきます。
変化8:金剛先生の右目をフォス自身の意思で埋め込む
フォスフォフィライトの状態7
- 両足:アゲート(硬度7)・貝殻
- 両腕:金と白金の合金
- 靴:合金による高いヒール付き靴
- 頭部:ラピス・ラズリ(硬度5)
- 左目:月の技術の合成真珠
- 皮膚(肌):シンシャの水銀
- 右目:金剛の右目
フォスは金剛に対して祈るよう要求しますが
金剛は祈ることができず、右目を残して崩れ落ちます。
あっけにとられるフォスでしたが
エクメア(エンマ)の最初からの目的が、
金剛の右目であることに気づきました。
フォスは金剛が最期に言い残した、
「幸福」を願い、得るために
金剛の右目を自ら埋め込むのでした。
変化9:一万年後は後光が差す仏や神のような姿に
フォスフォフィライトの状態8
- 姿:白いドレスを纏った後光が差す姿
金剛の右目を自ら埋め込み、一万年後に
能力と記憶の引き継ぎが完了します。
地上でひとり一万年を過ごしたフォスは、
宝石らしさが失われた、仏や神のような姿に。
話し方も穏やかな口調に変化しました。
フォスの成れの果て曰く、
「人間と新たな無機生命体の狭間の存在」。
変化10:人間のいない純粋なフォスフォフィライトの一片
仏や神のような姿のフォスには
純粋なフォスフォフィライト部分が
一欠片だけ残っていました。
金剛の兄機が言うには、
人間を含んでいない本来の部分になっているとか。
残った純粋なフォスは、兄機や
新たに誕生した岩石生命体と共に星の消滅から脱出。
とっても透き通った「一番小さい弟」としてーー。
『宝石の国』フォスの最終目的と一万年の孤独
主人公・フォスフォフィライトの
最新の体へと至るまでの変化の過程を
段階ごとにご紹介してきました。
フォスは身体の変化の他にも
徐々に目的や気持ちも変わっていき、
「すべての人間の消滅」が最終目的となりました。
また、フォスが最終的に至ることになった、
「七宝説」と「人間説」についても深読みしていきます。
※ここで紹介する「七宝説」「人間説」は物語の一例です。
『宝石の国』フォスの気持ちの変化と最終目的
フォスの最終目的は全ての人間を消滅させることでした。
孤独なまま迎えた一万年後の世界では、
金剛の兄機や他の岩石生命体たちから
滅び行く星からの脱出を勧められますが
フォスは「最後の仕事」を選択します。
「私は私の中に溶け込んだ人間と共にここで終え 博士と金剛と月人とが永きにわたり苦しみ続けた人間の根絶という仕事を完成させます」
※『宝石の国』13巻 フォスのセリフより引用
変化していくフォスの気持ちや目的はこちら↓
- 博物誌制作(博物誌編纂)
- シンシャの新しい仕事を見つける
- 流氷係
- 金剛先生の秘密を暴く
- 金剛先生に祈らせる
- 全ての宝石を破壊する
- 金剛先生の代わりとして祈る
- 全ての人間を消滅させる
博物誌制作という仕事からはじまったフォス。
他の仕事や目的は完了できないままでしたが、
全ての人間を消滅させるというスケールの大きい目的を
フォス自身の消滅と共にまっとうすることができました。
『宝石の国』は仏典に説かれる描写がベース
美しい宝石たちが織りなす『宝石の国』では
金剛先生や月人の服装や姿、
宝石や月人たちの「死」への概念など
さまざまな箇所で仏教色が感じられます。
中でも、『宝石の国』作者の市川春子先生は
インタビューで次のように述べています。
高校時代、仏教校に在籍していたためお経を読む機会がありまして、そこに「浄土は宝石でできている」という描写があったんです。その俗っぽい価値感というか人間らしい複雑味みたいなものがおもしろいなと、ずっと気になっていました。
つまり、この仏典に関する描写が
『宝石の国』のベースになっているとも考えられます。
形成する鉱物の物質がほとんど一致する仏教の「七宝」
漫画内で描かれているものや
市川先生のバックグラウンドを考えると…
フォスフォフィライトは
極楽浄土を表現する「七宝」に
徐々に近付いてしまったのではないか?
と深読みすることができます。
そもそも「七宝」とは…?
七宝
〘仏〙 七つの宝物。経典によって説が分かれるが、「無量寿経」では、金・銀・瑠璃るり・玻璃はり・硨磲しやこ・瑪瑙めのう・珊瑚さんごをいう。「法華経」では、玻璃・珊瑚を除き真珠・玫瑰まいかいを入れる。七珍。 「恰も極楽浄土の-荘厳の有様も、かくやと覚ゆるばかりなり/太平記 8」 → しっぽう(七宝)
『大辞林 第三版』より引用
とあるように7種類の宝のことをいうようです。
特に注目したいのが「法華経」での記述部分!
「法華経」では以下のようにいわれています。
- 金
- 銀
- 瑠璃(ラピスラズリ)
- 硨磲(シャコガイの殻)
- 瑪瑙(アゲート)
- 真珠
- 玫瑰(赤色系の宝玉とされる)
フォスを構成している鉱物たちと照らし合わせてみると……
- 金:両腕の合金
- 銀
- 瑠璃:頭部のラピス・ラズリ
- 硨磲:両足の貝殻
- 瑪瑙:両足のアゲート
- 真珠:左目の合成真珠
- 玫瑰:水銀と捉えればシンシャ、または合金
骨と肉・魂の要素が全て揃う「人間説」
この星には、かつて「にんげん」という動物がいたという。
『宝石の国2巻 裏表紙』より
アドミラビリス族によると…
地球に存在していた「にんげん=人間」は
星が欠けたときに分かれたとのこと。
それが「骨」「肉」「魂」の3つの種族です。
- 「骨」:宝石
- 「肉」:アドミラビリス族
- 「魂」:月人
ということは純粋な宝石生命体でもなくなり、
3つの要素が入り混じった存在…
「人間」に近付いているのでは?
それに金剛先生がフォスの「祈り」で
認証したことも興味深いポイント◎
人間と新たな無機生命体の狭間の存在として誕生
フォスは物語作中で、自分自身が
「人間と新たな無機生命体の狭間の存在」
であると発言しています。
「私は人間と新たな無機生命体の狭間の存在であり人間の兆しを有しています」
※『宝石の国』13巻 フォスのセリフより引用
主人公フォスフォフィライトは
人間を超えた存在になる可能性や
月の民を含め、3つの種族に分かれた
「人間」の末裔たちを救う「救世主」
といった存在になる可能性について、
本編内のいくつかの謎からも推測できました。
- 金剛先生の本名(正式名称)
- フォスが月に滞在した期間:49日
- 薄荷色は「西の浅瀬色」と表現:西は極楽浄土の位置

「本当のことが知りたい」フォスの最終目的と人間の終わり・新たな世界へ
今回は『宝石の国』の最弱主人公である
フォスフォフィライト(愛称・フォス)の
身体の変化と最終形態について解説・ご紹介してきました。
不器用ながらも明るく正直なフォスが
新たな鉱物を体へ取り入れて行く度に
見た目の他に考え方も変わっていきます。
特にラピス・ラズリの頭部を接合したときから
ちょっぴりダークな展開続きで心がしんどい…
月人との接触でさらに深まる謎や
他のキャラクターたちの行動、
最終的にフォスはどうなってしまうのか?
どきどきしながら展開を追った読者も多いはず。
金剛先生の代わりに役目を担ったフォスのお陰で
「人間は終わる」ことになりましたが、
新たな人間を内包しない存在によって
世界がはじまり、物語は続くこととなりました。
フォスと一緒に『宝石の国』を盛り上げていく
登場キャラクター一覧はこちらからどうぞ!↓
