『ねずみの初恋』は、タイトルや絵だけ見ると、一見普通の初恋マンガのように思えますが、ヤクザに殺し屋として育てられた少女・ねずみと、ごく普通の青年・碧(あお)が出会いからはじまる、かなりハードなダークラブストーリーです。初恋の甘さと、暴力組織に縛られた残酷な現実が同時に描かれていて、切ない恋愛マンガが好きや人間ドラマが濃い作品が読みたいという人にはかなり刺さる作品になっています。
ねずみの初恋はどんな作品?
『ねずみの初恋』は、大瀬戸陸さんによるヤングマガジン連載のマンガで、現代日本の街を舞台に「殺し屋×初恋」を描いたダークロマンスです。ヤクザ組織に道具のように育てられた少女・ねずみと、どこにでもいるような青年・碧くんが、決して平和ではない環境のなかで、それでも一緒にいようともがいていく姿が物語の核になっています。作品自体は恋愛ものらしい胸キュンなシーンもありつつ、暴力や命の危険が常に隣り合わせで、その中にも張り巡らされた複数の伏線もあり、全く先が読めないと考察サイトも盛り上がるなど、今話題になっている作品です。
ねずみの初恋のあらすじ紹介
ヤクザに殺し屋として育てられたねずみは、組織の命令で人を殺す日々を送っていましたが、ゲームセンターで出会った碧に一目惚れされ、初めて好きという感情を知ります。2人は同棲を始め、ささやかな日常を積み重ねていきますが、鯆率いる舛花組は、その関係を快く思わず、碧を誘拐してねずみに碧を殺させるという残酷な条件を突きつけます。碧を救うために、ねずみは舛花鯆と交換条件を結びます。それが碧を殺す代わりに殺し屋として育てることでした。
ねずみは、自分の手で碧の命を奪うのではなく、自分と同じ殺す側に彼を引きずり込むことで、生かす道を選ばされます。敵対組織との対立や、昏睡状態だった豚磨が意識を取り戻すことから、物語やより複雑にかつ大きく動いていきます。
『ねずみの初恋』キャラクター一覧
個性的かつ魅力的なキャラクターが多く登場するネズミの初恋ですが、ここからは、主要な登場人物を表でまとめます。
小山ねずみ(こやま ねずみ)
主人公・ねずみは、ヤクザ組織に幼い頃から拾われ、感情よりも効率と殺しを叩き込まれて育った少女。
人を殺すことに迷いを見せない一方で、自分の好きや楽しいと感じる感情には極端に疎く、褒められたり優しくされると戸惑ってしまうことも。
碧と出会い、恋愛を知り、一緒に暮らし始めてからは、料理に挑戦したり、服や小物の好みが少しずつ表に出てくるようになり、仕事道具からひとりの女の子になっていく。
それでも組織の命令や自分の過去からは簡単に逃れられないため、幸せな日常と残酷な仕事の板挟みになっていく。
白石 碧(しらいし あお)
もう一人の主人公ともいえる碧は、ぱっと見はどこにでもいそうな青年。
基本的には優しく穏やかな性格だが、過去の姉を殺されている。その犯人はねずみなのだが、それを知っていて近づいたのか偶然なのかはいまだ不明。
ねずみに一目ぼれをし、付き合うことになったのだが、それを知った鯆に拉致され拷問を受ける。
ねずみが殺し屋という事実を知ったうえで受け止めようとする度量があり、一緒に殺し屋として働くことに。
殺人を犯すことに葛藤しながらも、ねずみを守るために一緒にいることを選び続ける。
舛花鯆(ますはな いるか)
ねずみが所属する桔梗会舛花組の組長であり、ねずみを人を殺すための最強の道具として育てた人物。
荒っぽく怒鳴るタイプではなく、いつも落ち着いた物腰で話しながら、人の命を数字や駒のように扱う、知性と冷酷さが同居したキャラクター。
ねずみが碧と出会って普通の恋を知り始めたことも、鯆にとっては観察対象でしかなく、半年間楽しかったじゃろと言い放って、そのささやかな日常を一瞬で壊してしまう冷徹さが象徴的。
テング
鯆の側近であり、ねずみの仕事面の師匠として殺しの技術を叩き込んだ男。
ねずみに対して特別な情を見せることはほとんどなく、淡々と任務をこなさせる冷静な指導役という印象が強いキャラクター。
その一方で、ときどきねずみをかばうような行動を取ったり、さりげなく危険を避けるよう誘導したりする場面もあり、完全な敵とも味方とも言い切れないグレーさも。
水鳥
幼少期にねずみと同じ地下施設で生活していた、ねずみにとって唯一の友人のような相手。
流行に敏感で、メイクや服装もちゃんとこだわるタイプの今時の女の子として描かれているが、闇が深い過去を持つ…。
豚のことを憎むが、頭を撫でられて「えらい子じゃ」とほめられた記憶も残っていて、その歪んだ優しさがトラウマと一緒にこびりついている。
豚が昏睡状態から目覚め、記憶があるのかないのか分からない状態になったとき、強く動揺する一面も。
浅葱のことが好き。
舛花 豚磨(ますはな たくま)
かつてねずみや水鳥を監禁していた桔梗会舛花組の組長。
背中一面に大きな豚の刺青を入れているのが特徴で、幼い子どもたちを人間ではなく商品として平然と扱う、えげつない性格の持ち主。
ねずみによって半殺しにされ長い間昏睡状態となっていたが、昏睡状態から目覚めるものの、自分のことを村重春彦という人物だと思い込んでおり、舛花豚磨としての記憶を失う。
るり
豚磨のことをパパと呼び、鯆の嫁?
舛花組という異常な環境で育ってきた結果でもあって、愛情表現もかなり歪んだ方向にねじれてしまっている。
普段多くの言葉を発さないが、ネズミのことを強く恨んでいる。
中縹(なかはなだ)
鯆と一緒にねずみを観察する立場にいて、表向きはねずみのカウンセリング係のように振る舞いながら、実際には記憶の操作や心理実験のようなことをしている人物。
碧の姉の婚約者だった?
ペトロ
敵なのか味方なのか判別がいまいち難しい謎の多いキャラクター。存在を隠すために、肌を全て焼きつくされ黒く焦げた状態になっている描写があり、日の光の中では生活ができない。
ねずみに憧れに近い恋愛対象を持つも、碧や中縹とも繋がりが…?
浅葱
表の世界の常識も持っている一方で、組織の中でねずみや水鳥を管理する立場にいる。
性格は基本的に穏やかで、口調も柔らかめ。
水鳥から気持ちを伝えられるも、浅葱は戸惑いながらも、自分には好きな人がいると正直に伝え、水鳥の気持ちを茶化さず、真剣に向き合おうとする、恋愛にも人間関係にも誠実な人物。
まとめ
『ねずみの初恋』は、殺し屋として育てられた少女・ねずみと、普通の青年・碧が、ヤクザ組織の中で命懸けの恋を貫こうとするダークラブストーリーです。登場人物は多くありませんが、そのぶん一人ひとりの感情や背景が丁寧に描かれています。
暴力と死が近くにある一方で、日常の細かな優しさも丁寧に描かれており、ねずみがかわいいキャラクターグッズを好きだったり、碧が不器用なりにねずみを楽しませようとする様子など、「あ、ふたりとも普通の若者なんだ」と感じられる瞬間が多いです。そのバランスのおかげで、ただ暗いだけの作品にはなっておらず、「このふたりには幸せになってほしい」と自然に応援したくなる空気があります。


