友達に勧めたくなる漫画を選ぶことをコンセプトにし
数多くの名作が名を連ねる
「マンガ大賞2022」を受賞した『ダーウィン事変』。
アニマルウェルフェアやヘイトについて深く切り込んだ作風から
「令和の寄生獣」とも絶賛されていますが
いったいどのような作品なのでしょうか?
名言や見どころをとりあげ考察し
『ダーウィン事変』の魅力をあますことなく
解説していきます!
今最も注目されている作品ですので
ぜひとも押さえておきましょう~◎
※ネタバレを含みますのでご注意ください
主人公チャーリーの言葉は深く、ハッとさせられます~◎
【ダーウィン事変】心に刺さるチャーリーの名言を紹介
『ダーウィン事変』の最大の魅力は
チャーリーからポロッと出る
深い意味を持ったセリフです。
ここでは、その中から
特に魅力的な名言をいくつか紹介します。
まずはチャーリーの名言から見て行きましょう。
人間(ヒューマン)なのってどんな感じ?
※『ダーウィン事変』第1話 ©うめざわしゅん
1巻1話に登場した
チャーリーとルーシーの初めての会話で
「ヒューマンジーってどんな感じ?私たちとは世界の見え方が違う?」
というルーシーの質問への答えです。
※『ダーウィン事変』第1話 ©うめざわしゅん
人間とチンパンジーの間に生まれたチャーリーの目には
自分達とは違った世界が見えているのでは、と
ルーシーは無意識にチャーリーを「異物」とし「人間側目線」で質問します。
それに対しチャーリーは
「君がボクを分からないのと同じように、ボクも君の世界の見え方が分からないよ」と言う意味で、
同じ質問で返します。
「人間(ヒューマン)なのってどんな感じ?」
それを察したルーシーは
「仲良くしてくれる?」と握手を求めますが
ある意味「違った種の世界はわからない・知る術をもたない」という暗示にも見える回答で
非常に深い意味を持っている名言だと感じます。
この会話の伏線については
こちらの記事で詳しくまとめてあります↓
病原菌に感染してるのが、たとえ君でも撃ち殺すけど…
※『ダーウィン事変』第1話 ©うめざわしゅん
1巻1話に登場した
「病原菌を持ったネズミが噛みついてきたら」
というオジーの質問への返答です。
ヴィーガンで完全菜食主義なチャーリーに
病原菌を持ったネズミを殺せるか?と
オジーは挑発しながら、質問します。
※『ダーウィン事変』第1話 ©うめざわしゅん
動物を食べないチャーリーからネズミを撃ち殺すと聞いて
勝ち誇ったように喜ぶオジーに
「たとえ君でも撃ち殺すけど」と
ネズミも人間も同列に見ていると分かる言葉を投げかけ
オジーを凍りつかせます。
チャーリーは純粋に「種差別」をしませんし
もっと言うと全ての動物を「個」として見ているのだろう
と分かります。
たとえば同じ人間でも
オージーは撃ってもルーシーは撃たない、と思いますし。
チャーリーがヴィーガンなのは、
「たまたまそういう環境だったから」
と後に答えていますが
チャーリーは本当の意味で
「種差別を全くせず、人間も動物も同列に見ている」と
察せられる名言になっています。
なんで人間だけは殺して食べちゃダメなの?
1巻2話に登場する
ヴィーガン論争でのチャーリーの発言です。
肉を食べる人々へ
爆弾テロを起こしたALAについて
同じヴィーガン(完全菜食主義)である
チャーリーへどう思うか聞いた
質問の答えとなっています。
ヴィーガンを否定し
弱肉強食で何でも食べて良いのでは、と唱える一般の人でも
人間だけは「食べてはいけない」と前提で考えています。
トレヴァーがその理由を
「人間は特別に決まっているだろ」と
直球で答えていますが
人間は他の動物と違う、という前提から
既に種差別をしていることになります。
ヴィーガンを否定しながらも
人間だけは特別だ、としている人々は
ラインが違うだけで「食べてはいけないものを決めている」と
チャーリーは言っているように察せられます。
「人間を食べてはいけない、と考えている人は
肉を食べてはいけない、という人を否定できない」
という事でしょう。
人間も動物も同列に見ている
チャーリーらしい、素晴らしい名言となっています。
いまこの時も危害を加えているのと同じってことだよね?
1巻5話で
リヴェラに向けて言ったチャーリーの一言です。
チャーリーの家でALAにを襲われたルーシーは
今後も犯人が捕まらないのでは、という不安を口にします。
ルーシーの不安を取り除くために
チャーリーはALAに単独で乗り込み、
リヴェラに問いかけます。
未来に起こる悪いことを今心配し不安に感じることは
いまこの時も危害を加えているのと同じことでは、と言い
ルーシーの不安を取り除くために
警察に捕まってくれないか、と相談します。
未来への不安というのは目には見えず
どれくらいの「痛み」かは他者はもちろん、
本人にも正確に捉えられていない場合もあるでしょう。
ルーシーは
「グラフにして見せるわけにもいかないけど」
と言ってましたが、
そのため緊急度を低く見積もってしまいがちです。
しかしチャーリーは不安を「いまも危害を加えられている」と、
具体的に「痛み」と捉え、
緊急性が高いことだと説明します。
この説明には、ハッとさせられますよね!
未来に起こるかもしれない悪いことは
「その時に心配すれば?」と言うチャーリーの言葉も納得ですが
実際に感じている不安をキチンと「痛み」と判断し
「危害を加えられている」と捉えるチャーリーの見方は
慧眼だと感じますよ。
リアルにハッとさせられる
素晴らしい名言です。
君も僕も全ての動物はただの1(one)だ
1巻5話に登場した
リヴェラとの会話でのチャーリーの返答です。
「ヒューマンジー」という唯一の種であるチャーリーは
特別な存在だ、とリヴェラは説明します。
しかしチャーリーはそれに対し
自分は特別ではないし、
全ての動物はただの1(one)で特別ではない
と答えます。
「種」という分け方自体が「人間」が勝手にしているだけですし
そもそも動物・植物全てが「ただの1(one)」だと言う意味でしょう。
2巻8話でもゲイルとの会話で
「ボクは何の代弁者でもない、ただの一匹の動物」
「ただのチャーリーだよ」
と言っています。
同じ意味のセリフですが
チャーリーらしい、ハッとさせられる名言ですよね。
多くの名言が登場している当作品の中でも
随一の名言ではないでしょうか?
唯一の種であるチャーリーならではの
素晴らしい名言です。
【ダーウィン事変】気になるセリフと見どころ
『ダーウィン事変』は数多く登場する
深い名言が大きな魅力ですが
それら以外にも
気になるセリフがいくつか登場しています。
ここでは名言に続き
見逃せない見どころや
要チェックなセリフを紹介します。
ALAとリヴェラの目的とは何なのか?
『ダーウィン事変』は基本的に
「ALA・リヴェラに狙われて戦うチャーリー」
という形で話が展開しています。
ALAの目的は分かりやすく
「虐げられた全ての動物を解放する」ことであり
そのためにチャーリーをALAに取り入れようとしています。
※『ダーウィン事変』第1話 ©うめざわしゅん
しかしリヴェラの目的は違います。
3巻15話でルーシーに目的を語っており
「人間をもっと早く進ませること」
と説明しています。
チャーリーがダーウィンの価値転換を加速させる
ゲームチェンジャーだとも言っており、
それを促すためにチャーリーが必要なのだろう、と分かります。
つまり
ALAの目的とリヴェラの目的は違う
のです。
いっぽうでリヴェラは
チャーリーの弟であるオメラスとも接触しています。
オメラスもダーウィンの価値転換を加速させる
ゲームチェンジャーということでしょう。
「人間の進化の加速」がリヴェラの目的
だと考えられます。
- ALAの目的…虐げられた全ての動物を解放すること
- リヴェラの目的…人間の進化の加速
パーフェクトな生き方なんてどこにもないけど よりマシな選択肢ならいつもある
1巻3話でのギルバートのセリフで
ヴィーガンという生き方について語っています。
ヴィーガンになったとしても動物の犠牲は必ずあるため、
「パーフェクトな生き方」ではないと語り
それでも「そうしないよりした方がいい」という選択であり
生活に支障がないならした方が良いのでは、という
ヴィーガンという堅苦しそうな生き方が
シンプルな考え方の上での選択だと分かりました。
重いテーマの話の中で
非常に分かりやすい、リアルでも取り入れられそうな
素晴らしい名言となっています。
きみがヒューマンジーであることは切り離せることなの?
4巻20話で
ルーシーがチャーリーに向けて言った、質問です。
「もしボクが人だったら」という
チャーリーの仮定の質問に返した答えですが
「もし人だったら」が叶うのであれば
「人間(ヒューマン)ってどんな感じなの?」も叶う(わかる)ことになります。
ある意味「人間ってどんな感じなの?」と
「きみがヒューマンジーであることは切り離せることなの?」という仮定は
同義の名言ということになりそうですね。
両方とも
「絶対に分かり合えない」
という意味にも捉えられるセリフですが
「そうしないよりした方がいい」という姿勢で
少しでも分かり合えるように寄り添おうとする気持ちを表している
名言のように感じられます。
チャーリーやルーシーたち
キャラクターについては
こちらでまとめています↓
オメラスのセリフの意味~知恵の実~とは
オメラスは4巻22話で初登場する
チャーリーの弟です。
チャーリーの生みの母親エヴァが死の直前に
「私は2児の母」と打ち明け
その直後に
チャーリーと同じような
チンパンジーとの間に生まれた容姿をした
オメラスが登場します。
※6巻によりオメラスの出生の秘密に迫る情報が明らかになりましたので追記修正しています
オメラスは
- チャーリーの弟
- オメラスは代理母から生まれた
- 15年間ほぼ寝たきりで、しゃべることもできなかった
- ギルバートとハンナを殺した
- 地下に潜っていた
とわかっています。
チャーリーと同じ遺伝子(父・グロスマン博士、母:エヴァ)
を持っている弟です。
ただ実際に出産したのは、
当時、グロスマン博士の部下だったユァン博士!
つまり、オメラスは人間の代理母から生まれた…
ということが明らかとなりました。
リヴェラとの会話で
オメラスは謎なセリフを残しています。
兄さんだけ
のうのうと”楽園”に暮らし続けるなんて
ズルいだろ?
「楽園」というのは
ハンナとギルバートの家だとイメージできます。
しかし「知恵の実」は何を意味するのでしょう?
二つ予想してみました。
ひとつは、
「ヒューマンジーという高い能力」
だと予想することができると思います。
旧約聖書の
アダムとイヴがエデンの園(楽園)で禁断の果実(知恵の実)を食べる
というストーリーがベースになっていると思われますが
楽園⇒理想郷(オメラス)
になっているのは皮肉ですよね。
”オメラス”の元ネタとなるのは、
ゲド戦記の作者でもある
アーシュラ・K・ル=グウィンの
「オメラスから歩み去る人々」という小説に登場する
理想郷オメラスから来ている、と考察できます。
ある契約にもとづき成り立っている理想郷「オメラス」。
人々の幸福の代償に地下牢に一人の子どもが閉じ込められています。
住人は物事が理解できる年齢になると皆この事実を知らされ
事実を知った上で大勢の幸福のために
一人の子どもの犠牲を受け入れていくのか…
それとも
街から去り「オメラスから歩み去る人々」となっていくのか…
という内容になっています。
チャーリーとオメラスは兄弟ですが、それぞれの境遇が違いました。
チャーリーは、実の母から産まれ、健康に育ち
対して、オメラスは代理母から産まれた際、
瀕死状態が続き、地下室で一人暗闇に怯えていた…
「お前が課された生を呪わずに済んだのは
オレがお前のぶんまで存在の重いひき臼をまわしてきたからなのだ」
※5巻25話オメラスのセリフより
これらを踏まえると
オメラスは自分が犠牲になって
チャーリーは無事に育ったことを羨んでいる
こともわかります。
地下の牢屋に繋がれた子供⇒地下に潜っているオメラス(犠牲になっている?)
にもリンクしているようですね。
オメラスは「犠牲側」として考えているので、
自分という犠牲の上で(自分を犠牲にして)
のうのうと暮らしているのは
「ズルい」と考えるのは自然な気もします。
そうなると「知恵の実」とは
オメラス自身ということにもなるかもしれませんね。
まとめるとオメラスのセリフの
「知恵の実」が意味するものは
- ヒューマンジーという高い能力(禁断の実)
- オメラス自身(オメラスが犠牲になっている)
と、予想できそうです。
チャーリーとオメラスは、果たしてわかりあえるのか…
今後の二人の行動をチェックしていきたいですね。
【ダーウィン事変】は着地点が最大の見どころ
アニマルフェアについて深く切り込んだ作品
『ダーウィン事変』の名言や見どころを見てきました。
ヴィーガンについての議論は
かなりリアリティがあり
臨場感ある舌戦でしたよね!
さらにヒューマンジーであるチャーリーの一言一言には
大きく頷かされ、気付かされます。
ただこれまでの展開からは
最終的に人と動物は同じ立場になれないし
ヒューマンジーと人は分かり合えない、
みたいな落とし所になるように感じます。
よく引き合いに出される「寄生獣」は
「何かに寄り添い 生命終わるまで」と
タイトルの意味を回収しながら
「他の動物たちと寄り添い生きていく」という
素晴らしいラストとなっていました。
「ダーウィン事変」の最後の着地点も
このような希望のあるラストになれば嬉しいですが…
アニマルフェアやヘイト、ヴィーガン論争に対し
どのような着地点を示すのか?
最後の着地点は、絶対に見逃せないです!
「ダーウィン事変」を
少しでもお得に最後まで読みたい方は
こちらの記事をどうぞ↓